January 2025

Diffeomorphism group and gauge theory

談話会情報 日時 2024年12月5日15:30~17:00 (15:00よりtea time) 場所 D509 講演者 今野 北斗氏 (東京大学数理科学研究科) 講演題目 Diffeomorphism group and gauge theory 概要 4次元は多様体の分類理論の中で特異的な次元であり,4次元多様体のみに対して発生する現象が存在する.このような現象の発見・追求の道具として,物理学由来の偏微分方程式を4次元多様体上で考察するゲージ理論が有効であることも,現在では良く知られている.他方,多様体のトポロジーにおいて,多様体の自己同型群である微分同相群は基本的な興味の対象である.半世紀以上前に分類が一段落ついた高次元多様体に対してもなおその発展は著しく,最近のトポロジーの重要な潮流をなしている.そのような流れの中で,4次元多様体の微分同相群の組織的な研究,特にゲージ理論的な研究は,少数の先駆的な結果を除いて長らく未開拓だった.しかしこの数年,4次元多様体の族に対してゲージ理論を展開する「族のゲージ理論」が急速に発展し,それに伴い4次元多様体の微分同相群の理解が前進しつつある.具体的には,多様体の分類理論と同様,多様体の微分同相群に対しても,4次元特有の現象が存在することが明らかになってきたのである.談話会ではこのような最近の展開を概観したい.

より超限的な構成を行うために必要な公理について

談話会情報 日時 2024年6月27日15:15~16:45 場所 D509 講演者 津久浦健太(法政大学) 講演題目 より超限的な構成を行うために必要な公理について 概要  数学は無限をも対象とする学問である. とりわけ集合論は無限集合を興味の対象とする, 無限に関する数学である. 一方で人間は無限回何か試行することが出来ないし, 無限長の証明を書くことも出来ない. そのため集合論では, 選択公理等の非構成的な原理や, 超限帰納法が重要になる.これら無限に立ち向かうための基本的な原理を扱うことのできる, 数学を展開するに適している体系の1つがZFCであるが, その一方でZFCには証明も反証もできない命題, すなわち独立命題が数多く知られている. 独立命題の中には実数全体の集合の濃度評価に関する, 基本的だが重要な問題も含む. こうした現象の前で, 選択公理は無限集合の調査を行う際に十分な能力を持っていないのではないかという疑念が沸く. 本発表ではZornの補題・極大イデアルの存在を例として, グラフ理論への応用を交えつつ帰納法・選択公理の, 即ちZFCの拡張と, 種々の拡張可能性を前にして生じる問題について紹介したい.

正則木上の単純ランダムウォークが頻繁に訪問する点について

談話会情報 日時 2023年11月15日(水) 15:30 〜 17:00 場所 1E502 講演者 阿部 圭宏 氏(東北大学) 講演題目 正則木上の単純ランダムウォークが頻繁に訪問する点について 概要 *本談話会は「数学フロンティア」対象科目です. Erd˝os-Taylor (1960)は整数格子上の単純ランダムウォークが頻繁に訪問する点(thick point)について研究を行い, それ以来, 関連する研究が数多くなされてきました. 特に2次元の場合は解析が困難であることが知られており, thick pointはクラスターを形成するだろうと予想されていますが, 部分的な結果はあるものの, 詳細な性質はまだわかっていません. 最近, 2次元格子上のthick pointの研究は対数相関をもつランダム場の研究の枠組みに入ることがわかってきました. 正則木上のthick pointの研究もこの枠組みに入り, 2次元格子の場合に比べて解析しやすいことが知られています. そこで, まずは正則木上のthick pointの研究を推し進めれば, そこで得られた知見が2次元格子上のthick pointの研究でも役立つのではないかと期待されています.本講演では, 前半で上記の背景を紹介し, 後半で正則木上のthick pointに対応する点過程がPoissonクラスター点過程に収束することを紹介します. 後半の内容はMarek Biskup氏 (UCLA)との共同研究にもとづきます.

Coxeter 変換から定まる良い基本不変式とフロベニウス構造

談話会情報 日時 2023年12月7日(木) 13時45分~15時15分 場所 D509 講演者 佐竹 郁夫氏(文教大学) 講演題目 Coxeter 変換から定まる良い基本不変式とフロベニウス構造 概要 概要 G を実ベクトル空間 V0に作用する有限鏡映群とする。V=V0⊗RCを V0 の複素化とする。射影 π:V→V/G は同型ではないが、q∈V を Coxeter 変換の原始h 乗根に対する(h は Coxeter 数)固有ベクトルとしたとき、q は鏡映面の外にあるため、π は q においては局所同型である。これを不変式環の言葉で言い換える。C[V] の生成元として、Coxeter変換で固有ベクトルとなるものを固定しよう。すると上記は、V/G の座標環である C[V]Gの生成元を C[V] の生成元を用いて q でテイラー展開したとき、1次の係数に十分 0 でない項がある、と言い換えられる。テイラー展開の高次の項は、C[V]G の生成元の取り方に依存するが、逆に高次の項ができるだけ 0 になるように生成元を選ぶことができる。こうして得られる C[V]Gの生成元が実は V/G に入るフロベニウス構造における平坦座標(平坦不変式)であり、このとき 0 にならないさらに高次の係数がフロベニウス構造の積構造に対応することを紹介する。楕円ワイル群についての不変式でも同様の結果が得られているので、それも紹介したい。