Vojta予想と,その最大公約数や力学系への応用
談話会情報 日時 2024年12月11日(水) 13時45分~15時15分 (Tea time 13:15~) 場所 D509 講演者 安福 悠氏(早稲田大学) 講演題目 Vojta予想と,その最大公約数や力学系への応用 概要 Vojta予想とは,ディオファントス幾何の壮大な予想の一つで,「p進的な近似の精度を代数多様体の大域幾何で制御できる」と主張する.ブローアップ上でのVojta予想は最大公約数の不等式となり,整数点の分析などに応用されてきた.また,Vojta予想は,周期点の一様有界性や軌道上の整数点の非稠密性にも応用できる.このような近年の研究について紹介する.
Diffeomorphism group and gauge theory
談話会情報 日時 2024年12月5日15:30~17:00 (15:00よりtea time) 場所 D509 講演者 今野 北斗氏 (東京大学数理科学研究科) 講演題目 Diffeomorphism group and gauge theory 概要 4次元は多様体の分類理論の中で特異的な次元であり,4次元多様体のみに対して発生する現象が存在する.このような現象の発見・追求の道具として,物理学由来の偏微分方程式を4次元多様体上で考察するゲージ理論が有効であることも,現在では良く知られている.他方,多様体のトポロジーにおいて,多様体の自己同型群である微分同相群は基本的な興味の対象である.半世紀以上前に分類が一段落ついた高次元多様体に対してもなおその発展は著しく,最近のトポロジーの重要な潮流をなしている.そのような流れの中で,4次元多様体の微分同相群の組織的な研究,特にゲージ理論的な研究は,少数の先駆的な結果を除いて長らく未開拓だった.しかしこの数年,4次元多様体の族に対してゲージ理論を展開する「族のゲージ理論」が急速に発展し,それに伴い4次元多様体の微分同相群の理解が前進しつつある.具体的には,多様体の分類理論と同様,多様体の微分同相群に対しても,4次元特有の現象が存在することが明らかになってきたのである.談話会ではこのような最近の展開を概観したい.
パーコレーションにおける路の数
談話会情報 日時 2024年10月31日15:30~17:00 (15:00よりtea time) 場所 D509 講演者 福島竜輝(筑波大学数理物質系) 講演題目 パーコレーションにおける路の数 概要 整数格子の各辺において,独立にopen/closedが指定されているときに,いろいろな意味で連結性を調べることをパーコレーションの問題という.この模型については,無限に延びるopenな路の存在が中心的な問題として研究されており,多くのことがわかっている.一方で,指定された長さのopenな路がどれくらいあるかも,独立に興味ある問題である.この講演では,ある意味で「向き」のついた路の数については,長さについて指数的に増大し,増大率はランダムではない定数であり,各辺がopenである確率に連続的に依存する,といったことが証明できることを紹介する.
ジェネリック構成法
談話会情報 日時 2024年11月25日15:15~16:30 場所 D509 講演者 池田宏一朗(法政大学) 講演題目 ジェネリック構成法 概要 モデル理論は,公理とそれを満たす構造(モデル)との関係を研究する数学基礎論の一分野であるが,特に現代のモデル理論の出発点になったのがShelah の分類理論である.それは簡単にいえば,モデルの数を数えることで公理を分類する方法である.モデルの数を数えるという観点から,非常に扱いやすい公理として強極小な公理が知られている.例えば,標数が固定された代数閉体の公理は強極小になる.一方,「強極小な公理で自明でないものは代数閉体の公理に限られる」という予想があった.この予想に対し反例を与えたのが Hrushovski であり,そこで使われた方法がジェネリック構成法である.ジェネリック構成法とは,可算個の有限構造をうまく貼り合わせることで無限構造を作る方法であり,Hrushovski はこの構成法を用いてモデル理論の2つの有名な予想を解決した.今回は,ジェネリック構成法の概略を述べ,現在の研究内容との関連を説明する.
より超限的な構成を行うために必要な公理について
談話会情報 日時 2024年6月27日15:15~16:45 場所 D509 講演者 津久浦健太(法政大学) 講演題目 より超限的な構成を行うために必要な公理について 概要 数学は無限をも対象とする学問である. とりわけ集合論は無限集合を興味の対象とする, 無限に関する数学である. 一方で人間は無限回何か試行することが出来ないし, 無限長の証明を書くことも出来ない. そのため集合論では, 選択公理等の非構成的な原理や, 超限帰納法が重要になる.これら無限に立ち向かうための基本的な原理を扱うことのできる, 数学を展開するに適している体系の1つがZFCであるが, その一方でZFCには証明も反証もできない命題, すなわち独立命題が数多く知られている. 独立命題の中には実数全体の集合の濃度評価に関する, 基本的だが重要な問題も含む. こうした現象の前で, 選択公理は無限集合の調査を行う際に十分な能力を持っていないのではないかという疑念が沸く. 本発表ではZornの補題・極大イデアルの存在を例として, グラフ理論への応用を交えつつ帰納法・選択公理の, 即ちZFCの拡張と, 種々の拡張可能性を前にして生じる問題について紹介したい.
super Ricci flowの幾何解析
談話会情報 日時 2024年1月19日(金)15:30 〜 17:00 場所 D509 講演者 櫻井陽平氏(埼玉大学) 講演題目 super Ricci flowの幾何解析 概要 *本談話会は「数学フロンティア」対象科目です. 本講演ではRicci flowの優解であるsuper Ricci flowについてお話しする.super Ricci flowは非負Ricci曲率とRicci flowを結びつける概念であり,Bamler (2021+,2023)による幾何学流の収束理論やSturm (2018)による測度距離空間上の幾何学流理論に登場する.まず非負Ricci曲率(より一般にRicci曲率が下に有界な)Riemann多様体の収束理論ならびにそのような概念を持つ測度距離空間の理論について振り返る.その上でsuper Ricci flowの研究における今後の課題等について検討したい.時間が許せば,國川慶太氏(徳島大学)との共同研究で得られた結果についても触れたい.
D加群の幾何学的モノドロミーへの応用について
談話会情報 日時 2023年12月7日(木)15:30 〜 17:00 場所 D509 講演者 竹内 潔 氏(東北大学) 講演題目 D加群の幾何学的モノドロミーへの応用について 概要 *本談話会は「数学フロンティア」対象科目です. 複素超曲面のミルナーファイバーとそのモノドロミーは、これまで非常に多くの数学者により活発に研究されてきた。柏原-Malgrange の定理により、モノドロミーの固有値とBernstein-佐藤多項式(b-関数)の根のあいだには美しい対応関係がある。Denef-Loeserによるモノドロミー予想とは、この対応関係の類似がさらにモチヴィックゼータ関数より定まる位相的ゼータ関数とb-関数、モノドロミーとのあいだにも成立することを主張するものである。本講演においては、まずモノドロミーを求める従来からの方法、講演者によるD加群からのアプローチなどについてお話しし、さらにb-関数やモノドロミー予想との関係について述べる。続いて後半部では、正則関数をさらに有理型関数に取りかえた場合でも、同様の結果が成り立つことをお話しする予定である。
正則木上の単純ランダムウォークが頻繁に訪問する点について
談話会情報 日時 2023年11月15日(水) 15:30 〜 17:00 場所 1E502 講演者 阿部 圭宏 氏(東北大学) 講演題目 正則木上の単純ランダムウォークが頻繁に訪問する点について 概要 *本談話会は「数学フロンティア」対象科目です. Erd˝os-Taylor (1960)は整数格子上の単純ランダムウォークが頻繁に訪問する点(thick point)について研究を行い, それ以来, 関連する研究が数多くなされてきました. 特に2次元の場合は解析が困難であることが知られており, thick pointはクラスターを形成するだろうと予想されていますが, 部分的な結果はあるものの, 詳細な性質はまだわかっていません. 最近, 2次元格子上のthick pointの研究は対数相関をもつランダム場の研究の枠組みに入ることがわかってきました. 正則木上のthick pointの研究もこの枠組みに入り, 2次元格子の場合に比べて解析しやすいことが知られています. そこで, まずは正則木上のthick pointの研究を推し進めれば, そこで得られた知見が2次元格子上のthick pointの研究でも役立つのではないかと期待されています.本講演では, 前半で上記の背景を紹介し, 後半で正則木上のthick pointに対応する点過程がPoissonクラスター点過程に収束することを紹介します. 後半の内容はMarek Biskup氏 (UCLA)との共同研究にもとづきます.
強スパイク固有値モデルに基づく高次元統計解析
談話会情報 日時 2023年11月9日 15:15 – 16:45 場所 オンライン(zoom) 講演者 石井晶(東京理科大学) 講演題目 強スパイク固有値モデルに基づく高次元統計解析 概要 *本談話会は「数学フロンティア」対象科目です。 現代科学のデータは巨大化の一途を辿っています。ゲノム科学・情報工学・金融工学では、データの次元数は標本数を遥かに上回り、数十程度の標本数に対して次元数は数万を超えるようなデータがしばしば見られます。このようなデータに対して、従来の統計学である多変量解析では太刀打ちできません。そこで、2010年以降、高次元データに対する新しい統計学の理論である高次元統計解析が提唱され、発展してきました。本講演では、ゲノムデータに代表される、非スパースな高次元データに対する統計的推測について紹介します。高次元データを2つの固有値モデルで分類し、固有値モデルに基づいた理論・方法論の構築の重要性について、実際のゲノムデータ解析例を交えて紹介します。