高次元統計解析に基づくクラスタリングと変化点検知

日時:2025年11月14日金曜日 15:15~16:30 場所:自然系D棟509 講演者:江頭健斗 氏(東京理科大学 創域理工学部) 概要:現代の科学・工学分野では,観測変数の数が標本数を大きく上回る「高次元データ」が一般的となっています.このようなデータ構造のもとでは,従来の多変量解析の理論や方法論は適用が難しく,それに代わる新しい統計的枠組みの構築が進められています.本講演では,高次元統計解析の観点から,クラスタリングと変化点検知という二つの代表的なデータ構造推定手法を取り上げます.まず,階層的クラスタリングにおける樹形図の構造に注目し,高次元データ特有の性質を整理します.特に,階層的クラスタリングに関する最近の理論的進展についても紹介します.続いて,時系列的な高次元データに対して,平均構造や共分散構造の変化を検出するための新しい方法論を紹介します.これらの手法は,高次元漸近理論に基づいて構築されており,大標本データとは異なる高次元特有の現象を適切に捉えることを目的としています.さらに,数値実験を通じて,理論的成果が実際のデータ解析にどのように応用できるかを示し,高次元データ解析の今後の展開と課題について議論します.

Diffeomorphism group and gauge theory

談話会情報 日時 2024年12月5日15:30~17:00 (15:00よりtea time) 場所 D509 講演者 今野 北斗氏 (東京大学数理科学研究科) 講演題目 Diffeomorphism group and gauge theory 概要 4次元は多様体の分類理論の中で特異的な次元であり,4次元多様体のみに対して発生する現象が存在する.このような現象の発見・追求の道具として,物理学由来の偏微分方程式を4次元多様体上で考察するゲージ理論が有効であることも,現在では良く知られている.他方,多様体のトポロジーにおいて,多様体の自己同型群である微分同相群は基本的な興味の対象である.半世紀以上前に分類が一段落ついた高次元多様体に対してもなおその発展は著しく,最近のトポロジーの重要な潮流をなしている.そのような流れの中で,4次元多様体の微分同相群の組織的な研究,特にゲージ理論的な研究は,少数の先駆的な結果を除いて長らく未開拓だった.しかしこの数年,4次元多様体の族に対してゲージ理論を展開する「族のゲージ理論」が急速に発展し,それに伴い4次元多様体の微分同相群の理解が前進しつつある.具体的には,多様体の分類理論と同様,多様体の微分同相群に対しても,4次元特有の現象が存在することが明らかになってきたのである.談話会ではこのような最近の展開を概観したい.

より超限的な構成を行うために必要な公理について

談話会情報 日時 2024年6月27日15:15~16:45 場所 D509 講演者 津久浦健太(法政大学) 講演題目 より超限的な構成を行うために必要な公理について 概要  数学は無限をも対象とする学問である. とりわけ集合論は無限集合を興味の対象とする, 無限に関する数学である. 一方で人間は無限回何か試行することが出来ないし, 無限長の証明を書くことも出来ない. そのため集合論では, 選択公理等の非構成的な原理や, 超限帰納法が重要になる.これら無限に立ち向かうための基本的な原理を扱うことのできる, 数学を展開するに適している体系の1つがZFCであるが, その一方でZFCには証明も反証もできない命題, すなわち独立命題が数多く知られている. 独立命題の中には実数全体の集合の濃度評価に関する, 基本的だが重要な問題も含む. こうした現象の前で, 選択公理は無限集合の調査を行う際に十分な能力を持っていないのではないかという疑念が沸く. 本発表ではZornの補題・極大イデアルの存在を例として, グラフ理論への応用を交えつつ帰納法・選択公理の, 即ちZFCの拡張と, 種々の拡張可能性を前にして生じる問題について紹介したい.